エセ日乗 21〜30

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遠足で鎌倉へ行くことになった。すれちがう人の半分が、大仏か小説家との噂が流行している町であるが、これは真偽を確かめるいい機会なのではりきって行ってくるつもり。たぶん噂に過ぎないとは思うのだけど。

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というわけで鎌倉へ行ってきた。

結論を言うと、すれちがう人の半分は見学の小中高生であり、小説家も大仏もカラステングも歩いていない。神秘はない。外国人も多い。そもそも街並自体がツーリスティックに改造されていて、お寺もどちらかといと動物園の無気力なシロクマにちかい。僕は、境内で笑い声をたてれば、たちどころに和尚が飛んできてあの「活入れ板」で打たれるものとばかり思っていたので、少々毒気を抜かれたかたち。

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友人のページとか見てると、なんだかわりと真面目なこととか書いてて、ちょっと考えさせられてしまう。僕はいったいなにをしているんだ、と。ようやくページを更新したと思えば、鎌倉軟弱なり、くたばれ、などとばかり書いている。書くべきは自他共に啓発開花のひとつのきっかけになりうる文章のはずである。鎌倉にカラステングのいないのに憤怒して、どうする。こんなことではいつか裁かれるに間違いない。これからは心構えを変えて、更新しなければならない。

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体力測定テストみたいのがあった。去年と同じ轍を踏まないように、今年はたっぷり余裕を見て家を出たのでばっちり間に合った。(去年と同じ轍とはなにか? 僕は去年、駅からグラウンドまでの道のりで迷子になり遅刻したのである。遥か前方にYシャツに緑色のベストを着た人が見えたので、クラスメイトだと思いノコノコついて行ったが、いつまで経っても到着しない。妙だと感じてクラスメイトに走り寄ると、南無三、果たして白いTシャツに緑色のリュックを背負った関係ないオッサンであったという、夢のような本当のはなし)

テストはまぁ、つまらん結果にしかならなかった。

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暑くなるに従い、増えるものは湿気と虫。僕はゴキブリより公園や神社なんかに発生する、蚊だかなんだか分かんないような、無数の羽虫に底の無い憎しみを傾けている。霧の一粒ずつが細かい羽虫に変わったような、アレである。僕は下校時にアレを見るたび、ゴキブリ用殺虫スプレーを両手に備え、

「ウえあアああああ」

とか叫びながら全力で突入して、毒霧を撒き散らして奴らを殲滅させたくなる。知らない人に見られたくないからやらないけど。

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明日から見学旅行とかいう一泊二日の旅に行かされます。水力発電所とか見られます。僕が火力発電を嫌忌する旨は以前記したとおりですが、水力発電にはわりと大らかな気持ちを持っています。太陽光発電、潮力発電に次ぐ気の利いた発電方式だと思います。市井の反対むなしく過疎村がダムに水没したり、放流の際に哀れな人々が溺死したり、テロリストに制圧されたりもしますが、だいたいにおいて牧歌的に発電機を回しているようです。所員が休み時間にダムで水泳をしたり、冬場は銀盤と化した水面でスケートやったり、樽に入って放水口からダイヴしたりね。

しっかり見届けてきます。

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というわけで見学旅行に行ってきましたが、んが、僕はすこし怒っています。食事のことです。まずいのは承知しています。覚悟していました。いけないのはメニューです。向こうで取った食事4食のうち、3食にハンバーグがついてきたのです。これが許せますか。これは何だ。犬に骨、猫に鰹節、ガキにハンバーグか。日本人にオポチュニズム、英国人にスノビズム、ガキにハンバーグか。春に花、夏は耳をつんざく蝉の声、秋の月夜に、冬の霜、そしてガキにハンバーグか。なんたる短絡。あと半年くらいはハンバーグはいらない。

ちなみに、水力発電所は僕の期待を裏切らないものでした。さすがです。

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このサイト、いくらなんでも閉鎖的すぎるので、また月200円の広告免除料がもったいないので、他所との交流のためリンクページを作ってみようと思います。以前はいわゆるテキストサイトに適当にリンクを貼っていましたが、あまりに不毛な喧騒にうんざりして、リンクページを消去してしまいました。しかしあまりに衰えすぎて人恋しくなってきたので、すこしでも体温を感じるために今リンクページを!

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パソコン新機購入と期末考査で近頃ちっとも本を読まなくなってしまったので、テスト休みのこの機会に、久しぶりに神保町に行った。いくつか買った本のなかで、岩波文庫の「ギリシア奇談集」というのがなかなか面白い。これは古代ローマ人の著述家がさらに古代のギリシアの本の中から奇談を集めて編集したもので、「ネズミは住み着いている家が崩れそうになると引越しをする」という今日も言われているような事が載っていて、成程古代ギリシアからの言い伝えであったのかと興味深いものもあれば、「ライオンは病気になるとサルを食べて治す」とかいうどうしようもない嘘が書いてあったりもする。そのわりに「白鳥は歌好きといわれるが筆者は白鳥が歌うのを見たことがない」とか迷信を否定してみたりもしている。古代ローマ人も奴隷にムチを振るって、その傍でこんなものをせっせと書いていたのだから相当の酔狂家である。

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夏風邪をひきました。異変に気がついたのは昨朝で、喉がじりじりするなと思って熱を測ったら38度。しかもタイミングの悪いことに、明日はクラスメイトと出掛ける予定が入っています。普段は春の熊か秋の馬のように健康なのに、どうして大事なときに限って体調を崩すのか。とにかく明朝までに治さなければならないので、終日寝ていて、朝になったら回復していました。そして出掛けて、今帰ってきたところです。

いやぁ、若いって素晴らしいですね。昨日は萎えた風船のようにベッドに倒れていた人間が、一度日が沈んで昇れば、解き放たれたロケット風船のように飛びまわれるんだから。